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様々な場所で生きてます

衣装からみた上を下へのジレッタ

 

 

 自分がジャニーズを好きになるなんて一生ないと思っていたのに、見事に沼に落ちてから、まだ数ヶ月で、好きになった人に会いにいけるとは思いませんでした。しかも、そんな頻繁に起こるものではないイベントなのだから、私より先に好きになった人なんて行きたくて仕方ないんだろうな、と思い、少し躊躇いながらも。舞台が好きで、長年好きな女の子も見にいけると思ったら我慢できず、たくさんの友人にお願いして、どんな席でもいいから、と願った末、運よくチケットを手に入れ、行ってきました。横山裕さん主演の「上を下へのジレッタ」。

 考察といったら聞こえの良い感想は、本当に気の知れた数人の友達しかフォローせずにこそこそと生きているジャニーズアカウントで、しかもふせったーを使ってあれやこれや呟いていました。有り難い事に「てぶろとかどっかにまとめてほしい~」といっていただいたので、まあこんな事は一度限りだろうな、って思いながらまとめる事にしました。記憶は新しいうちに。鉄は熱いうちに。飽きっぽいので、書き終わらないままお蔵入りにならないと良いのですが。

 以下の文は題名通り、一応「衣装から」深読みするのが軸になってはいますが、正直な話私は衣装に詳しいわけではなく(生地とか全くわかんないです)、デザインに詳しいわけでもなく(よく分かんないです)、強いて言えば舞台の見方もぺーぺーです。っていうか言うて、衣装から見てなくない!?って思うかもしれません。でも、私の大好きで尊敬している俳優さんの言葉を借りて、前置きとさせてください。

観劇して何を感じるかは、体調、それぞれの記憶、家族や友人との関係など、その時、その人の状況が関係しているんです。つまり、ひとりひとりが感じたものはすべて正解ということが大前提です。勘違いなんてない!そう感じたならそうなんです!」

「これ違うと思います」「ここ、私はこう思いました。」それでいいんだと思います。よかったらこの記事を機にみなさんがお話してくれたら嬉しいです。特にこの「上を下へのジレッタ」は、いろんな解釈があってこその舞台だと思います。そんな広い目で以下を読んでいただけたら嬉しいと思います。それでは長々となりましたが、以下本文です。

 

 

 

衣装について

 ジレッタの衣装は、私の記憶の限りでは、主要キャラクターが白と黒ベースで、他キャラ(コーラス隊)がカラフルでした。これはやはり主要キャラとの見分けが一発で分かるように、また、幻想で派手であるジレッタの世界を現すのにカラフルな衣装はよく生えるし、その中に迷い込む門前であったり、オンちゃんが分かりやすいようにできているのではないかなと思っています。

 数々の衣装の中でも今回私が話を進める上で、キーとなるキャラクターは、門前市郎と小百合チエです。

門前は、一貫して黒スーツです。チエはもっとも記憶に残るドレスが白、また、他のシーンでも、白ベースのドレスを着ています。(ツタンカーメンの衣装のみは、短時間で大きな意味を持たないシーンだと思ったので省かせていただいてます!)

有り難い事にチエの衣装絵を描いている方がいらっしゃいましたのでご参考に。考察するときの助けになりました…ここでひっそりとお礼申し上げます、ありがとうございます。とても素敵な絵で大好きです。

 ストーリーを見ていても分かるように、門前とチエは基本的に正反対の人間です。また、黒と白も正反対の色として使われることが多いですね。故に私は、黒と白に意味を持たせているんじゃないかな?と思いました。

 門前とチエの対比的なところは、超簡単に言うと、「ジレッタを肯定する者」と「ジレッタを否定する者」だと思います。つまりは、「幻想に生きたいと願う人間」と「現実に生きたいと願う人間」です。門前は初っ端から「全てまやかし 全ては虚構」と歌ったり、実際ジレッタを使って、世界を揺るがそうとします。一方で、チエは自分の本当の姿で歌いたい、少しでも稼いで実家に帰ってオンちゃんと結婚したい、と小さな幸せ、現実を見ています。

 これにより、ざっくりと、黒は幻想、白は現実を表している、と仮定して、キャラクター毎に掘り下げていこうと思います。

 

門前市郎と黒いスーツ

門前の衣装の変化は、記憶の限りでは大きく分けて3つほどあります。(正直これに限っては、確かめる術や観劇一回のみの記憶ではあやふやな憶測が多くありますので、間違えている情報もあるとは思います…。ご了承ください。)また門前の心情も、劇中で大きく三回に分けて、衣装と共に変わっていると私は考えています。

まず前半。最初のシーンは様々な色のコートに身を包んでプロローグ→脱いだ下にはスーツ。コートが何を表しているのかもう私の記憶ではどんなプロローグだったのかほぼ記憶にないので省きますが、最初のスーツは、所謂一般的なものでした。黒いスーツに、白いシャツ、黒いネクタイ、黒いズボン。この時点から、全編を通して門前は黒いスーツに身を包んでいるので「幻想」を受け入れている人間だと解釈します。音楽内でも「すべてまやかし 全ては虚構」「望みどおりの虚構の世界」「どれも演出!全部タテマエ!そうフィクション!」と、現実ではないもので大衆を騙す門前のスタンスが歌われています。しかし、中にきているのは白いシャツ。まだ、ジレッタに出会う前で、リエを突き放したり、チエを使って自分の力でのし上がろうとしている門前なので、心の中には現実的な部分が残っていたのではないでしょうか(=白いシャツ)。

 2つ目の衣装、中間部。1部の後半くらいからだったと思いますが、私の記憶が正しければ、ジレッタに出会った後から。門前の衣装は、黒スーツに身を包んでいるところは変わらないものの、白シャツが、黒いタートルネックに変わっています。つまり、全身黒です。この頃の門前は、ジレッタに出会い、有木社長に媚を売り始めたり、竹中社長をジレッタでコテンパンにしたり(まあしたのはオンちゃんですが)、1部最後では「世界中を俺とお前で騙すんだ」「世界を手玉に」と歌っています。自信に満ち溢れていて、貪欲に上へのし上がろうとする門前らしさは健在ですが、後にリエに言われるように、彼はもう、自分の力で上を目指そうとはしていません。よって、全身黒=ジレッタに魅せられている・ジレッタに取り憑かれてしまっている状態、なのではなかったのでしょうか。また、後M17「ありふれた男」辺りでリエに言われるまで、彼自身は気付いてはいません。

 3つ目の衣装、後半。これが、つい先程書いた確かM17「ありふれた男」辺りから、変わっています。歌詞から見ても、M17を機にM18から門前の目的は変わって行ったことは明らかですね。3つ目の衣装が、一番メディアで映った、黒スーツに、黒いシャツ、白いネクタイと白いベルト、だと思います。前の衣装に対して、白、の要素が少し増えています。つまり、リエの言葉で「白=現実」に目をむき始めた、また、M17の最後の歌詞、「本当の俺は…」が、私的には門前を紐解く中で一番大切なワードだと思いました。彼は散々嘘をついたり虚構をみせたり騙し騙し素敵な世界を見せてきたし、ある意味、嘘の象徴である小百合リエを肯定し、現実の象徴である越後君子を批判し続けた。自分に自身があってたとえ少し揺らいでもリエが立ててくれる事で倒れることなく、すぐに立ち直ってきた中で、本当の自分が何なのか、全く分からない自分に気付きますね。そして、それを奮い立たせてくれていたリエは隣にいなく、寧ろ、そんなリエに現実を突きつけられている。これを機に、門前は違う方向に歩き始めました。これで、門前が元の方向に歩き始めたのだったら、私は衣装は、一番最初の、白いシャツに黒いネクタイだったのではないかと思います。つまり、もう、身はジレッタに引き込まれて逃れられないので、スーツの下のシャツも、黒くなってしまったのではないでしょうか。

 

小百合チエと白いドレス

 小百合チエは前記の通り、すべて白ベースのドレスでできています。どのシーンにどのドレスを着ていたか把握はしていませんが、一番印象的なのは、ウェディングドレスのような、一番豪華なドレスでしたが(個人的に好きなだけです)、これは真っ白で一番豪華で、夢のようで、ジレッタのチエの姿が全部そうだったので、ある意味ウェディングドレスだったのではないかな、と思っています。

 チエ、君子、なぎさ、と3つの名前がありますが、彼女は一貫して、「本当の自分を見てほしい」と思っているキャラクターです。なぎさの名のときに、仮面を取ったり。チエの姿を好いていなかったり。君子の名は、本当の彼女です。チエのことを「君子」の名で呼ぶのは、作中、唯一、オンちゃんだけだったように思います。(ただ、一番最後のシーンにだけ、門前は初めて「君子」と叫んでいましたが。門前は深く見れば見るほど悲しい人間ですね。)そんなオンちゃんを、チエは心から愛していました。チエはジレッタを体験しても、ジレッタに魅せられはしませんでした。いつも、「現実」にいるオンちゃんが、心配で、愛していて、二人で故郷に帰って質素に結婚式をあげて暮らしていくだけが、彼女の望みでした。門前にしてみれば、どこまでも平凡で、つまらなくて、そんな現実バカバカしいと思っているような事が、彼女は大切だったのです。

 彼女は劇中、なんども現実を大切にしているような歌詞を歌っています。M5「お腹がすいている間の期間限定の栄光(中略)けれどじゃあ「本当の私」は?(中略)「本物」は無価値?」M3、M21の食うか飢えるかは特にそうです。「そこそこ食べていければいいわ」「どれも素敵な現実にしかない宝物」「現実ありきの夢でしょ」

薄っぺらい幻想や偽物の小百合チエを愛されるより、辛く苦しく大勢の人が愛してくれなくてその上あざ笑われていても、一人自分を受け入れてくれる大切な人がいるだけで、現実を受け入れていきたいと思っている、チエの強い姿が劇中には描かれています。チエは、門前に脅迫(?)されてオンちゃんに黙って身体の関係を続けていたし、みてくれだけでいろいろな人に批判されて、好きな食事も制限され、オンちゃんは死にそうになったり自分を置いて幻想の世界に目を向けてしまって、本当だったらジレッタに縋るほど辛いと思うのです。それでも彼女は最期まで一貫して「幻想より現実」を見ていた。何よりも現実に生きている自分を信じていた。そんな強い信念が一貫した白がベースの衣装たちにも表れていたのではないかと思います。

 

その他のキャラクター

 他キャラクターを見たときに、やはり次に目立つのは山辺音彦です。何故上に書かなかったかと言うと、ジレッタを扱えるようになった前の衣装が全く思い出せないからでした。申し訳ございません。でも、明らかに、山辺音彦は、ジレッタを扱えるようになってから、白いスーツでした。ジレッタを扱っていた人間が白いスーツ、というのは、一番最初に仮定としておいた、黒は幻想、白は現実を表しているとは離れているかもしれません。しかし、オンちゃんというキャラクターを見たときに、彼は、一貫して、越後君子を愛していたというのが大きいと思います。彼は、世間に愛された小百合チエよりも、越後君子を愛していた。劇中でもよく「ご飯食べに行こう!」と言っていたし、彼は「君をお腹いっぱい食べさせてあげる事が僕の幸せ」的な発言をよくしていました。キミちゃんと生きる為に、が後々、門前に絆されて、人間の見えない大きな何かに後押しされて、名声や栄光に眩んで、大切な光、キミちゃんを最終的には失ってしまいました。彼の衣装が何故変わらなかったのか、そもそもこの衣装から見るという考察自体、深読みしすぎて、別に衣装にはなんの意味もないよ!と言われてしまったらそこで終わりなんですが、無理やり意味を考えてみると、やっぱり、彼は一貫して君子を愛していた、強い信念を持っていたというところに落ち着くと思います。

 また、間リエも、(本当に悲しい事に資料が残ってないので衣装が分からないんですが)白ベースに、少し黒や茶の混じったワンピースだったと思います。彼女はストーリーの中で一人、逆走するキャラクターでしたが、門前によく寄り添い、チエと同じ強い意志を持ったキャラクターでした。決してジレッタに魅せられず、全てが門前を愛しているが故の行動だったと思います。

 そして、ジミー・アンドリュウスもとても大切なキャラクターの一人です。彼は、ゴールドの衣装に身を包んでもいましたが、チエと歌うとき、確か白いスーツでした。ジミーとチエは同じ立場です。非常に似ています。「偽りの美声」「偽りの名声」「偽りの喝采」彼がスピーカーを食われた後に「歌おう地声で」と言ったように、人々を偽りの自分で騙していた彼もまた、本当の自分を受け入れてほしかった一人なのだと思います。

 

まとめ

 以上色々と衣装から分類してキャラクターを考えていった結果、黒は幻想、白は現実を表しているという仮説から、つまりは、黒のキャラクターは自分を見失っていて、白のキャラクターは自分を持っている、と分類されるんじゃないかと思いました。

門前は最期まで「I love You」「I need You」を言えなかったのに対して、チエははっきりと「I love You」「I need You」と言っている。門前は弱い自分を受け入れられずにそれでも前を進んでいったけど、チエは醜い自分も受け入れている。門前が悪いなんて、門前が間違っているなんて思いません。こうやって考えたとき、むしろ、私たちが一番近いキャラクターってなんだか、門前の方なんじゃないかなって思いました。人間の弱さを認めたくない、そんな門前は実は一番人間らしかったのかもしれません。

 上を下へのジレッタに、私は最終的に、「あなたは自分の醜いところも受け入れて、現実を生きる勇気がありますか?」って問いかけられたような気がします。

 最後、白い月に、白いドレスと白いスーツを身にまとったチエちゃんとオンちゃんが、白い階段を昇っていくのは、なんだか結婚式のようでした。黒い洋服を身にまとって黒い、暗い闇に消えていく門前が、苦しくて苦しくて仕方なかったです。「おしまい」という言葉に私はひどい恐怖を覚えました。とんでもない作品でした。

 

 

 今回衣装からお話しましたが、宮川彬良さんの音楽もまたすごい複線が張ってあって、鳥肌がすごかったです。特に、M3の「食うか飢えるか」がアーメン終止で終わったのを聞いたとき、正直、「えっダサい!」ってなんて思いましたが、リプライズで土下座したくなりました。本当に天晴れです。CD出ないんですかね。再演しないんですかね。残らないのがなんだか勿体無いです。もう一度機会があったら綿密に聞いて分析したいものです。

 また、本当に倉持裕さんの演出や脚本の緻密さにはいつも感服します…。何度彼の作品で息をのんだことだろう。本当に恐ろしい人です。すごいです。

頭に残air:manさんの振り付けから、演者さん一人ひとりの演技力、コーラスの皆様方の歌唱力、何から何まで本当にすごい作品でした。思い出すとぽやぽやしてしまって、私、ジレッタにいたのかなと思ってます。

 本当に素晴らしい作品に出会わせていただきました。ありがとうございました。

 

 そして、こんな長い文章をここまで読んでくださった貴方がいらっしゃるのだとしたら、ありがとうございました。読み辛い部分もあったかと思いましたが、何か新しい発見があったのなら、とても嬉しいです。

 

 

 

 

 

 

 

最後の最後に超自分の感想ですが、初めての横山裕さんほんとかっこよすぎて何回も変な声でそうでした!!!大好きなしょこたん可愛すぎて超抱きしめたかったです!!!最高ありがとう世界。